未来に芽をプロジェクト

株式会社ポイントピュール

代表取締役社長 大道敦(おおみち あつし)

事業内容について

株式会社ポイントピュール 代表取締役 大道 敦 氏
株式会社ポイントピュール 取締役ゼネラルマネージャー 大道亜津美 氏
インタビュアー 山城智二 氏 (有限会社FECオフィス 代表取締役)

山城)事業内容に関してお聞かせいただけますか?

大道敦社長)2001年3月9日に法人を設立し、今年(2021年)で20周年を迎えました。久米島の海洋深層水を活用した化粧品の開発・製造をやっています。

山城)社名にインパクトがありますが、どの様な想いでつけられたのですか?

大道敦社長)私は、久米島の学校を卒業後に5年ほど大阪で理美容の修行をしました。23歳で沖縄に戻り最初は那覇で働きました。当時はカットの大会で2回優勝した経験があります。そして、沖縄に戻った2年後に“久米島にいいお店が無い”という事で私の両親や兄弟から呼ばれ、久米島で開業する事になりました。ポイント的に良いサービスを提供するという事で「ポイント」という店名の理美容室を開業しました。その後、化粧品の業界に参入するにあたって、ポイント的なピュアなものをつくりたいという想いから「ポイントピュール」という社名にしました。

大道亜津美GM)理美容室をやっている時から見てきたので、将来を見越した良い名前だなと感じました。

大道敦社長)創業日の3月9日は“サンキューの日(ありがとうの日)”なので、当社の営業車十数台のナンバープレートは全て“39”です。常にありがとうという感謝の気持ちでやっています。

事業内容について

久米島で化粧品製造を始めた経緯

山城)久米島で化粧品製造を始めた経緯をお聞かせください。

大道敦社長)2000年に日本で最大規模の海洋深層水取水施設が久米島にできました。当時は、この海洋深層水を活用して事業を起こそうという機運の中、ある人は“水”、ある人は“塩”というように、様々なビジネスを立ち上げました。私自身は、理美容をやっていたのですが、当時は品質の良くないものを使っていて、手が荒れたり爪が欠けたりすることに日々悩まされていました。

そのような中、久米島の沖合612mから取水した環境ホルモン等の汚染のない水を使えば良い商品ができると思い、化粧品をつくることに決めました。ちょうど化粧品の全成分表示が法律化されたタイミングだったのでいろいろ勉強しました。調べてみると原材料の中で一番多いのが“水”でした。
例えば、化粧水であれば約80%が水、シャンプーやクリームだと約50%が水です。
当時は水道水をろ過した水が使われるのが一般的だったので、良いモノができると考えたのです。実際作ってみるとやはり良いモノができました。

久米島で化粧品製造を始めた経緯

化粧品事業への参入

山城)もともと理美容という専門職をされていて、化粧品という全く別の業界に参入するのは、かなり大きな挑戦だったのではないですか?

大道敦社長)30数年前に久米島に帰ってきてから理美容室を開業し、多い時は1日50名ぐらいのお客様にご来店いただきました。ところが、その後久米島の人口は毎年のように減り、同時に売り上げも減っていきました。今さらハサミを持って東京・大阪に行くわけにもいかず、久米島にいながら全国・世界へ発信できるものはないか探していました。

そこに海洋深層水の話があったので、海洋深層水を使った化粧品をやる事に決めました。しかし、起業したのが40歳を過ぎてからだったので、これから化学の勉強をしても難しいと考え、研究員などを採用して5名ぐらいでスタートしました。
私自身は、野球でいう監督の役割に徹して営業や情報収集で全国を飛び回り、久米島で研究開発をして様々なブランドを立ち上げました。私はもともと理容師ですが、大阪で働いていたのが有名な理美容室で、フランスで修行をしてきた今でいうカリスマ美容師がいるお店でした。
先生がカリスマだったので、様々なメーカーがシャンプーやパーマ液などの新商品がでる度にお店に持ってきているのを何気なく見ていました。

理容師だった私が、化粧品の研究開発や製造という分野にすんなり入り込めたのは、当時の光景が頭に残っていたからかもしれません。環境に恵まれたんだと思います。

化粧品事業への参入

化粧品の商品化

山城)化粧品を商品化した後にすぐに売れはじめたのですか?

大道敦社長)沖縄県庁で発表して、新聞やテレビにも出て華々しくデビューしました。次の日からすぐ問合せの電話がくると思っていたのですが一切きませんでした。
深層水やゴーヤ、月桃など、沖縄には身近に良い素材がありすぎるからかもしれませんが、沖縄県内では全く評価されませんでした。

そこで、ひとまず県内での販売をやめて東京に行きました。久米島から那覇に行くのではなく、久米島からいきなり東京に行きました。そこから2~3年かけて東京でヒットさせることができました。
沖縄には化粧品の原料が三十数種類あるのですが、全国では稀のようで、アセロラやゴーヤ、パッションフルーツやアロエ等、食べられるものから作られた化粧品は、“沖縄の自然から作られた化粧品”という事で良い評価をいただきました。商品開発を始めて20年になりますが、当初は沖縄では全く売れず、東京で売れたことで逆輸入みたいなカタチで沖縄のマーケットに戻ってきました。

現在では、大手や美容室などから月に10社~20社、年間で100社ぐらいのオファーをいただけるようになりました。そして、創業から20年間で約400社の商品をつくらせていただきました。現在も100社ほどのOEM商品をつくっています。その上、マーケティングや研究開発の一環で製造・販売している自社商品も120点ほどになりました。

また、最先端の技術情報の収集と研究開発をするために、県外拠点(研究所(東京)と京都営業所)を設置し、毎日会議をしています。これからすぐに商品化するものと、先々商品化を検討しているものを合わせると、1000レシピほど完成しています。

化粧品の商品化

生まれ育った久米島への想い

山城)生まれ育った久米島への想いを聞かせください。

大道敦社長)私が久米島に戻った38年前は一番島が潤っている時でした。しかし、データを見るとどんどん人口が減っているのがわかりました。私が島に戻ったころと比較すると、人口は3000人も減っています。その様な中、我々にできる事は島に仕事をつくる事だと考えていたので、深層水を事業にするときには少しでも雇用を増やしたいと考えていました。久米島の若者は、高校を卒業して島を出ると、仕事が無いからなかなか帰ってこないんです。

最近、面白いことに移住者が多いんです。うちの社員も東京、大阪、京都などいろいろな地域から来ています。彼らは沖縄の自然環境を求めて移住してきます。そうであれば、久米島で生まれ育った人は久米島の良さもわかっているから、魅力的な仕事さえあれば久米島に帰ってくるのではないかと考えています。このことは久米島の過疎化を止める重要な要素だと考えているので、久米島に仕事をつくるために一生懸命頑張っています。

弊社は、おかげさまで社員は70名になり、久米島本社で45名のスタッフが働いています。少しは貢献できているのではないかと考えています。

大道亜津美GM)私自身も生まれ育った場所から商品開発ができ、島の良さが伝えられる仕事なので、誇りを持って働いています。

生まれ育った久米島への想い

SDGsへの取り組み

山城)SDGsの取り組みについてお聞かせいただけますか?

大道敦社長)最近はSDGsがよく取り上げられているが、うちの会社はずっと前から取り組んでいます。私たちは海から利益を得ているので、海を汚してはいけないという考え方のもと、工場の排水を完全にろ過した状態で海に流しています。また、売り上げの一部を「久米島の海を守る会」に寄付したり、再生可能エネルギーを積極的に採用したりしています。

また、久米島町とハワイのコナ州が姉妹都市を結んでいるので、コロナ前は毎年交流の機会を持ってきました。コナ州の知事もこれ以上海を汚してはいけないという考えが強く、共感しています。その様な背景もあり、サンゴに優しい素材や、生分解性の素材などをセレクトするなど、人と環境に優しい商品づくりをしています。

久米島では1日13000トンの海洋深層水の取水量を10万トンにしようという動きがあります。ハワイが10万トンなので、久米島も10万トンにしたいということで、水産分野でも活用やクリーンエネルギーなど、様々な研究開発がされています。

私たちは、海洋深層水でできたクリーンエネルギーを取り入れたいと考えています。海洋深層水を取水する際の、海洋温度差発電によってできた電気を活用するという考えです。もし実現できれば、工場も配達する車両もすべてクリーンエネルギーで賄いたいと思います。5年後にはできるのではないかと期待しています。

また、うちは70名の社員のうち50名以上が女性で、部長にも女性を登用しています。女性の参画を積極的におこなっているので、いい意味で女性が仕切っている会社といえるかもしれません。創業当初は男性が多かったのですが、商品が化粧品ということもあり、マーケティングや研究開発などでは、女性がメインで引っ張り、男性はバックアップするカタチだと思います。

大道亜津美GM)化粧品は女性の感性が重要だと思っています。男性と女性では発想が違うので、参画メンバーはほとんどが女性です。話が通じやすいので私自身はやりやすいです。男性がやった方がいい仕事もたくさんあるので、そこはバランスが重要と考えています。

山城)亜津美さんはゼネラルマネージャーということで何を担当されていますか?

大道亜津美GM)私はこの会社に入って3年半ぐらいになります。今は直営店が4店舗あるのですが、それらを統括して店舗づくり、売上管理、スタッフの育成をしています。また、商品開発や企画開発にも携わっています。

SDGsへの取り組み

Ryu Spa(リュウスパ)

山城)本日国際通り店を拝見したのですが、いつ通っても目に飛び込んでくる店舗というか、店舗と商品が一体化している印象を受けます。

大道亜津美GM)Ryu Spa(リュウスパ)を発信する場として国際通りに今年オープンしたので、商品から沖縄の素材の良さを発信していくと同時に、店舗に入ってきた瞬間に海洋深層水とか、沖縄の自然素材を伝えられるような内装や装飾を意識しています。イメージカラーはブルーにし、植物も取り入れています。

大道敦社長)我々がデザインすると“ゴテゴテの色”を使いたがる傾向にあるので、今回は広島のデザイナーさんを採用し、県外の人がみる沖縄のイメージを綺麗にデザインしてもらいました。2年ぐらいは県内店舗で販売をしながら、ここを本店として国内外へRyu Spaブランドを展開していきたいと考えています。

山城)県外からの目線をかなり意識されているようですが、やはり女性の印象を強く意識しているのですか?

大道亜津美GM)女性もそうですが、今は男性コスメの需要も増えてきているので、男性も入りやすいようにメンズコーナーを設けており、男女問わずに来店していただいています。幅広い世代に使っていただけるコスメになってほしいと思っています。

Ryu Spa(リュウスパ)

おすすめの商品

山城)素晴らしい商品ばかりだと思いますが、その中でもおすすめの商品はありますか?

大道亜津美GM)私が入社して初めて商品開発に携わらせていただいたのが「ボタニカルシリーズ」なのですが、鮮やかなパッケージで、プレゼントやお土産にも使いやすいシリーズになっているのでお勧めしています。“ボタニカル”というのは、“自然本来”という意味で、沖縄の植物由来の成分を入れていて、アセロラやシークヮーサー、海ぶどうなどが入った商品となっています。また、ボタニカルシリーズの基本にして「アンドリゾート」というランクを上げたシリーズもラインナップしています。

大道敦社長)北谷店を出店するにあたって、店舗展開をするためにデザイン担当者と3人で韓国に行きました。現在韓国でもうちの商品を販売しているのですが、韓国は美容大国なので、どんなふうに商品を販売しているのか、2日間かけてマーケティングしました。これが商品開発やブランディングに活きているのがヒットしている要因でもあると考えています。

おすすめの商品

コロナ禍の影響や取り組みの変化

山城)コロナ禍の影響や取り組みの変化をお聞かせいただけますか?

大道敦社長)2019年頃から需要が伸びており、海外との取引も堅調でした。ところが、2020年1月に東京ビックサイトで開催された展示会には、韓国や台湾の企業が来ませんでした。また、2月に行く予定だった台湾の商談会もキャンセルになりました。韓国に出張した際に「これは大変なことになる」と感じたので、2月から準備をし、3月から営業方針を変えました。我々の対応は早い方だったと思います。

それまでは、観光客1000万人に売り込む目的で、環境に優しいシャンプーやアメニティを開発しており、まさにこれから提案していこうとしているところでした。それがだめになったので、すぐに営業先を通販や非対面式販売のマーケットに切り替えたところ、すべてヒットさせることができました。

コロナ禍でしたが、おかげさまで社員が25名増え70名になりました。最近も増やしているので、むしろ伸びています。

コロナ禍でもともとの売り先にお客様がいなかったので、視点を変えて販売が動いているマーケットに営業をかけました。久米島の海洋深層水を使った良いモノということで営業をかけ続けたのが結果につながりました。うちは製造元としてピンチに強いと思っています。燃えるものがあると強い。何もないとボケっとしてますが・・・。

コロナ禍の影響や取り組みの変化

478Farmを導入して期待する事

山城)478Farmを導入して期待する事は?

大道敦社長)県外ではSDGsに関わる取り組みは色々と発表されていますが、なかなか動けずにいたので参加させていただく事になりました。自社だけではできない取り組みだと思います。県内の企業の皆さんと一緒に取り組んでいるのがとても良い取り組みだと思います。

山城)今後のビジョンを教えてください。

大道敦社長)おかげ様で社員が70名になりました。近々100名になろうとしていますが、スタッフが自分で考えて仕事ができる環境をつくっていこうと思います。
また、人と環境に優しい商品づくりを進めていきます。沖縄の30種類以上の原料を使った商品の開発や、防腐剤を少なくする研究、海を汚さないために何ができるのかなどの研究開発に力を入れていきます。ありがたいことに、我々はこれを自社で出来ます。
社内でもそういう機運が高まってきているので、今は私がいなくても会社が動いています。

大道亜津美GM)なるべく環境に優しい容器や原料を使い、海洋深層水と自然素材がミックスした商品をもっと全国、世界に発信していければいいと思っています。

478Farmを導入して期待する事

久米島の未来について

山城)久米島の未来はどうあってほしいですか?

大道敦社長)海洋深層水の産業を興すことで久米島に雇用をつくります。現在、海洋深層水関連で200名ぐらいのスタッフが働いています。私はこれを1000名にしたいと考えています。雇用をつくることを一生懸命やっています。我々の仕事は島民に仕事をつくる事、そして島を発展させることです。

久米島の未来について

企業プロフィール

株式会社ポイントピュール

代表取締役社長 大道敦(おおみち あつし)


ポイントピュールは沖縄県久米島町にある化粧品OEM/ODMメーカーです。
「久米島海洋深層水」から独自技術で精製した化粧品原料水を100%利用し、沖縄の天然成分と機能性にこだわった化粧品の開発・製造を行っています。

住所:〒901-3104 沖縄県島尻郡久米島町字真謝486-12
電話番号:098-896-8701

株式会社ポイントピュール